近年、IoT(モノのインターネット)の進化と普及により、多数のデバイスが常時インターネットに接続されるようになっています。そんな中、注目を集めている通信技術が「LPWA(Low Power Wide Area)」です。
LPWAは「低消費電力かつ広範囲通信」を実現する無線通信方式であり、電池駆動の小型センサーや遠隔地の設備との通信に特に有効です。通信速度はさほど高速ではないものの、少量データの送受信を長期間にわたって安定して行うことができます。LoRaWANやSigfox、NB-IoTといった規格が代表的です。
LPWAが活用される分野は多岐にわたります。代表的な業界・職種は以下の通りです。
製造業(工場設備の遠隔監視、保全)
農業(スマート農業、環境センシング)
物流業(貨物・車両の位置追跡)
建設業(重機管理、作業員の安全管理)
地方自治体(スマートシティ、防災インフラ)
医療・介護(見守りシステム、在宅患者の健康モニタリング)
特にインフラの整備が難しい地方や、人手不足に悩む中小企業にとっては、コストを抑えつつ自動化・効率化を進める有力な手段となります。
なぜ今、LPWAが必要なのでしょうか?その背景には、以下の3つの課題があります。
人手不足の深刻化
特に建設業や農業など、現場作業の多い業種では人手不足が加速しています。LPWAを使えば、現場の情報をリモートで収集・把握することができ、管理業務の省力化が可能です。
インフラ老朽化と監視の必要性
橋梁やトンネル、水道管といったインフラの老朽化が進む中、常時監視が求められています。LPWAによるセンサー設置により、低コストで広範囲に監視体制を敷くことができます。
コスト抑制と導入の容易さ
従来のモバイル通信と比べて通信コストが大幅に安価なため、導入障壁が低く、電池駆動のまま数年間使えることも魅力です。中小企業でも導入しやすく、DX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩に適しています。
今後、LPWAは「日常に溶け込んだIoT社会」を支えるインフラとなっていくでしょう。たとえば以下のような未来が想定されます。
農場の状況がスマホで一目瞭然:土壌や気温の状態をLPWAで収集、AIが自動で灌水指示。
道路や橋の異常をセンサーが自動通知:事故や災害前の兆候を早期にキャッチ。
高齢者の健康状態を遠隔管理:異常があれば即座に家族や医療機関に連絡が届く。
つまり、LPWAは単なる通信手段ではなく、生活や経済を支える“社会インフラ”そのものになろうとしています。特に日本のように高齢化が進み、効率化が急務の国においては、ますますその役割が重要になっていきます。